保釈金という言葉を、一度くらいは聞いたことがあると思います。

テレビを見ていると「保釈金〇〇円で保釈されました」などのニュースを見ることもあるでしょう。お金がある人はお金を払えば保釈されていいなぁ・・・などと思ったこともあるでしょう。

しかしながら、保釈ってどのようなことなのでしょうか?逮捕されたのをお金で解決して釈放されたってことなのでしょうか?

そんな保釈や保釈金にまつわる疑問についてご紹介します。

保釈金とは?

保釈金とは、犯罪を犯した(疑いのある)人が、起訴されてから裁判が終わるまで拘束される身柄を、一時的に自由にする(保釈する)代わりに裁判所に預けるお金のことを言います。

と言っても、そもそも逮捕されてから起訴や裁判になるまでどのような流れになっているのかよくわかりませんよね?

逮捕~裁判までの流れをご紹介します。

逮捕とは、警察官や検察官などが犯罪を疑われている人の逃亡や証拠隠滅を防ぐために身柄を拘束することを言い、勾留とは、その身柄を刑事施設(留置場)に留置することを言います。

犯罪を疑われている人の身柄を拘束している間に、取り調べや捜査をして、起訴する(裁判にかける)か不起訴にする(釈放する)かの判断をします。

事件発生 → 逮捕・勾留 → 捜査 → 起訴 → (保釈) → 裁判 → 有罪
不起訴 無罪

捜査の結果、犯罪を犯した可能性が濃厚であると判断された場合、起訴され、身柄の拘束が延長されて留置場から拘置所へ移されます。

基本的には、裁判が終わり判決が出るまで身柄は拘束されたままとなります。

裁判の結果、無罪となれば釈放となりますが、有罪となり実刑判決となるとそのまま刑務所に入ることになります。逮捕されてから刑期が終わるまで何年も一般社会に戻ることはできないということになります。また、無罪判決であった場合や、執行猶予がつく場合であっても、逮捕から判決が出るまでの長い間身柄を拘束されたままだと社会復帰は極めて難しくなってしまいます。

そこで、裁判に必ず出廷するという約束をすれば、判決が出るまで社会に戻って生活できるという制度が設けられています。それを「保釈制度」と言います。

保釈制度により保釈許可がおります。

この保釈を許してもらうために一時的に裁判所に納付する保証金のことを保釈金と言うんです。保釈されている間に、逃亡したり証拠を隠滅したりしないための担保のようなものになります。

保釈金を払うと保釈され日常生活に戻ることができますが、これは罪を許してもらったわけではありません。あくまでも判決が出るまで一時的に日常生活に戻っているだけで、裁判を受け有罪判決がでればその刑罰を受けることになります。

裁判で無罪になった場合には釈放されますが、保釈は釈放とは違います

お金を払うことによって一時的に日常生活に戻れているだけで、罪がなくなったわけでも、刑罰を受けなくなったわけでもありません。

保釈の条件

犯罪を犯した人誰もが保釈金を払えば一時的に自由になるわけではありません。殺人犯などが一時的にでも自由の身になったら怖いですよね。なので、保釈には一定の条件があります。保釈の流れと条件をご紹介します。

保釈の流れ

申請から保釈までの流れをご紹介します。

1. 保釈申請 ・・・起訴直後から可能。保釈申請は弁護士。
2. 保釈の許可・却下 ・・・保釈申請があると裁判所が保釈の可否を決定
3. 保釈金の決定 ・・・保釈が許可されると同時に保釈金の金額も決定
4. 保釈金の納付 ・・・保釈金を納付すると、保釈される。
5. 保釈 ・・・保釈金の納付でその日中に保釈。通常は身元引受人がお迎え。

仮に保釈申請が却下されたとしても、裁判まで何度も保釈申請することが可能です。保釈金の納付は、保釈の条件になっているので、保釈の許可が出たとしても保釈金が納付されない限り保釈はされません。直ちに払うのが通常です。

保釈金の支払い方法ですが、通常は被告人の家族や知人などが弁護士に支払い、保釈許可の決定が出たら弁護士が弁金を持って裁判所の出納課に納付します。裁判所への支払いは電子納付によって納付することをできますが、その場合は納付の確認に時間がかかり、その分保釈が遅くなることになります。

保釈の条件

保釈が許可されるにはどのような条件があるのでしょうか?刑事訴訟法に保釈の条件が定められており、下記のような場合は保釈が認められません。

1. 懲役や禁固刑1年以上に値する罪を犯した
2. 過去に1に該当する罪を犯している
3. 同じ罪を2回以上犯したことがある
4. 証拠を隠蔽する可能性がある
5. 住所や氏名が不明

事件が比較的軽いものであり、過去に犯罪を繰り返していることがなく、逃亡や証拠隠滅の可能性がない場合に、保釈が許可されます。

保釈中は、保釈決定の条件に従って生活する必要があります。

保釈決定書には事件の関係者と接触しない、裁判にはちゃんと出席するなどの約束事が書かれています。保釈の際に保釈金の納付も条件になっています。この保釈金は保釈の条件を守れば裁判後に全額返還されます。

万が一条件を破った場合には、全額または一部が没収されることになります。保釈中は原則監視がつくことはないので、通常の日常生活を送ることができます。

旅行は保釈条件で制限されていることが多いです。通常は「海外旅行または3日以上の旅行をする場合は、前もって裁判所に申し出て許可を受けなければならない」と規定されています。一部制限はありますが、通勤や通学などは自由です。

保釈金が没収されるケース

保釈金が没収されてしまう保釈中の行動をご紹介します。

裁判に出廷しない

保釈金は、逃亡せずに裁判に出廷するために預かるお金なので、本来の目的である裁判へ出廷しないと預けた保釈金は没収されます。全額没収されることはあまりなく、半分没収されるのが一般的です。

逃亡はしていなくても、遅刻をしたり忘れたりする場合もあるかもしれません。その場合もペナルティとして保釈金の一部が没収されます。

逃亡する

裁判に出廷せず、その後連絡をつかない状態になると、逃亡したと考えられます。逃亡すれば保釈金は全額没収となります。

保釈中の禁止事項を行う

保釈中にはいくつかの禁止事項があります。「無断で居住地を変えない」「無断で海外に行かない」「被害者と連絡を取らない」「事件関係者と接触をしない」などが一般的です。これらの禁止事項を行うと、保釈金の一部が没収されます。

保釈金を没収するかどうか、また没収されるのは一部なのか全部なのかは裁判官の裁量によって決められます。没収に対して不服を申し立てることもできます。

保釈金の相場

保釈の際に納付する保釈金ですが、金額はどのように決められるのでしょうか?保釈金の金額は、裁判官が事件ごとに決定します。返還されなくてもよいと思って被告人が逃亡してしまっては意味がないので、保釈金の金額は被告人の資産や年収、事件の内容、身元引受人の有無などを考慮して決められます。

例えば、重大な犯罪を犯しており、裁判で有罪になり実刑判決となる可能性が高い場合には、その分被告人が裁判から逃げようとする可能性が高いので、保釈金は高額になります。

また、何十億といった資産を持っている場合、保釈金として200万円納付させたとしても、保釈金を捨てて逃亡する可能性が高いと考えられます。その場合は逃亡を躊躇させる額(数千万や数億)といった保証金を設定します。

一般の人で執行猶予が見込まれる場合には、200万円~300万円程度が保釈金の相場と言われています。

保釈金を払えない場合は?

保釈が認められても保釈金を払わないと身柄を解放してもらうことができません。

保釈条件さえ守ればいずれ返還されるお金とは言え、保釈金は一括納付が条件となっているので、用意できない場合もありますよね?そんな場合どうしたらよいか対処方法をご紹介します。

保釈金を現金以外で支払う

現金での用意が難しい場合は、現金と同等だと認められたもので納付することができます。対象となるのは以下の2点です。

・有価証券
・裁判所が認める被告人以外の者が差し出した保証書(保釈保証書)

保釈保証書は、「日本保釈支援協会」と「全国弁護士協同組合連合会」が発行しており、裁判所へ保証書を提出することで保証金を納めたのと同じ扱いになります。万が一保釈金の支払いが発生した場合には、保釈保証書を発行した団体が支払いを行ってくれます。

日本保釈支援協会の立替制度を利用する

一般社団法人日本保釈支援協会から保釈金を一時的に立て替えてもらうことができます
通常、申請は担当の弁護士に行ってもらいます。

起訴されてすぐに申請することができ、申請すれば翌日には立替の許可が下ります。事件内容や被告人の前科などによって審査があり、審査の結果によっては一部自己資金を用意する場合もあります。

利用できる人 被告人本人以外(家族や担当弁護士など)
立替限度額 500万円
立替期間 2ヶ月ごとに延長可能。延長手数料が発生する。
立替手数料 立替金額50万円まで一律10,000円(税別)。50万円増すごとに10,000円(税別)加算
返還方法 保釈保証金還付時に一括返還

詳しくはこちらもご参照ください。>日本保釈支援協会HP<

家族や友人から借りる

保釈金は、基本的には裁判が終われば返金されるので、その旨を説明し、身近な親族や友人に足りない分、お金を借りるという方法もあります。

金融機関から借りる

銀行や消費者金融からお金を借りるのも一つの方法です。

銀行の方が金利が低いのですがその分、審査が厳しくなります。一方で消費者金融は銀行に比べ金利は高いですが、銀行ほど審査は厳しくありません。いずれにしても、十分注意して借りるようにしましょう。

保釈金の減額請求

保釈金は一括納付が原則で分割での支払いはできませんが、減額請求することはできます。減額請求とは、裁判所の決定に対する不服申し立てとして行うことができます。

しかしながら、裁判所が提示する保釈金の金額は、被告人の逃亡などを防止するための経済的な威嚇も兼ねているので、よっぽど経済的な問題がない限り減額は認められません

まとめ

逮捕されて起訴されると、裁判が終わるまで拘置所に身柄を拘束されることになります。
その身柄を一時的に自由にするために裁判所に預けるお金のことを保釈金と言います。

保釈には条件があり、誰でも保釈金を払えば身柄を自由にしてもらえるわけではありませんが、身柄を解放するためには保釈金の支払いは不可欠で、保釈金の金額は裁判所によって決められ、基本的には裁判後に返還されます。経済的に苦しく保釈金が払えない場合は、日本保釈支援協会の立替制度なども検討してみてください。

・逮捕後、起訴されると裁判が終了するまで拘置所で身柄を拘束
・保釈とは、起訴後裁判が終わるまでの間、一時的に身柄を解放
保釈には保釈金の納付が不可欠
・保釈金は原則一括納付
・保釈金の納付期限はない
・保釈金は、事件の内容や被告人の資産や年収などを考慮して裁判所が決定
保釈金は、保釈条件を守れば裁判後に全額返還
・保釈期間中に保釈条件を破ると、保証金の一部もしくは全額が没収
・保釈金を払えない場合は、日本保釈支援協会の立替制度が安心