名義貸しとは、自分の名前を貸すことです。単に名前を貸すだけではなく、詐欺行為。「特殊詐欺」の一つです。特殊詐欺とは、架空請求や振込詐欺、還付金詐欺などがあります。
平成29年の特殊詐欺は、わかっている数だけで18000件を超えていて、被害額は394億円にものぼっているようです。凄い被害金額ですよね。こんなにも多くの人がなぜ騙されてしまうのかと不思議に思うかもしれませんが、相手はプロなので、言葉巧みに近づいてきます。
多くの人は「自分は大丈夫だ」と思っているはずですが、実際に被害にあってしまうのです。今回は、詐欺の手口を知ることで、詐欺から身を守る手助けになってもらえればと思います。
名義貸し詐欺の手口とは?
名義貸しはその名の通り、自分の名前を貸すのですが「名前を貸してくれれば◯◯万稼げますよ」などと言って、近づいてきます。
このように直接的に近づいてくれば分かりますが、詐欺だと分かりにくく近寄ってきたり、お金に困ってつい甘い言葉に乗ってしまうことはあると思います。この名義貸しにはこのような手口があります。
・ クレジットカードの申込
・ 携帯電話の契約
・ カードローンの申込
・ マイカーローンの申込
1.銀行口座の名義貸し
「銀行口座を作ってくれれば謝礼を払います」という内容の詐欺です。
カードローンやクレジット、携帯と違ってお金の被害がないので問題なさそうな気がしますよね。でも口座の売買というのは立派な違法行為です。
犯罪に使われることが多い
銀行口座は振込詐欺や架空請求などの指定口座に使われることが多いです。警察から「あなたの口座が振込詐欺に利用されている」と聞かされて初めて発覚することもあります。
銀行口座は基本的に誰もが作れます。クレジットの審査が通らないから変わりに・・という話であればまだ分かりますが、口座は自分で作れば良いのですから、詐欺の可能性がほとんどです。まさか預金口座にしようとしているわけはないですよね。
2.携帯電話の名義貸し
「携帯電話を契約してくれれば謝礼を払う」「すぐに解約するから一度契約してほしい」などと言って携帯電話を契約するように要求してきます。携帯電話も振込詐欺や架空請求に使われますし、すぐに解約されることはありません。
複数年契約にしていたら、解約金を支払う必要も出てきます。犯罪に使われると、名義貸しした本人も犯罪の片棒を担ぐことになるのです。
若者がバイト感覚で詐欺に加担してしまう
契約するだけで数万円もらえるので、大学生など若者がバイト感覚で契約してしまいます。携帯電話は、カードローンやクレジットカードと違い、若者に馴染みの深いものなので、軽い気持ちで契約してしまいます。
携帯料金を支払ってもらえていると思っていたら、長期延滞になっていて携帯電話会社から強制解約されることもあります。そうなると将来審査が必要なものの契約をしようとした時に、審査に通らなくなるのです。
3.クレジットカードの名義貸し
カードを新しく申込させる方法と、カードで買い物をさせる方法があります。カードを新しく申込させる方法は、「カードのキャンペーンやモニター」とうたったり、「審査に通らないので代わりに契約してほしい、謝礼を渡す」と言った内容が多いです。
カードで買い物させる方法には、「30万円分購入してくれれば5万円の謝礼を渡します。商品は後でキャンセルするので大丈夫」などと言って、ブランド物を購入させ、ブランド品は取られキャンセルされることもなく、謝礼も払われないというケースです。
請求は本人にくる
カードで30万円分の商品を購入したけど詐欺だと分かった場合、それをカード会社に伝えても請求を止められることはありません。カード会社からすると、詐欺にあったのか本人が嘘を言っているのか分かりませんし、基本的に請求は契約者に行くので、カード会社に訴えてみてもどうしようもありません。騙された本人は最悪パターンですよね。
4.カードローンの名義貸し
「カードローンで借りてくれれば、謝礼を払います」という内容が多いです。
もちろん返済は詐欺師がすると言ってきますが、実際に支払われることはありません。支払日になって返済がないのでカードローンの会社から連絡が来て判明します。延滞や借入件数を増やしてしまうと、個人信用情報に傷がつきます。
そのため、将来本当に自分がカードローンやクレジットの契約をしようとした時に、契約できなくなってしまいます。
カードローンの名義貸し詐欺は様々な手口がある
カードローンの名義貸しは、色々な文句で近づいて来ます。
多いのは、「契約して一旦預けてほしい」「契約してくれれば謝礼を払う」といい、返済はしないというケースです。その時も、キャンペーン中やモニターという言葉を使うこともあります。また、最初の数ヶ月は詐欺師が返済をし、被害者に安心させるというケースもあります。こちらも数ヶ月経てば返済は滞って、請求が契約者にいくことになります。
5.マイカーローンの名義貸し
マイカーローンの契約をさせて車を購入し、闇ルートで転売したり解体して海外で売る方法です。返済はするとは言われますが、もちろん返済はされず車も手元に残りません。
解体して海外で売れば詐欺師の足もつきません。もしも名義貸しがバレてしまったら、一括返済を求められる場合があります。マイカーローンは多額のお金なので、一括返済となると生活や将来にも多くの影響を及ぼしますよね。
多額の負債が残る
マイカーローンは高額な金額を借りることができます。金利が低いとはいえ、車も手元に残らず多額の負債だけが残ります。こちらもカードローンやクレジットカードと同様、詐欺にあったと言っても支払いが免除されることはありません。
名義貸しは違法です!
名義貸しは刑法により、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金とされています。
犯罪に使われるとは知らなかったと言っても通用せず、詐欺に加担したとみなされます。また、犯罪に使われなかったとしても、名義貸しという行為そのものが違法なので罪に問われます。
返済義務は名義人になる
クレジットカードやカードローン、マイカーローンの返済義務は名義人であるあなたに発生します。
携帯電話の月々の支払いも同じです。支払いができてなくて、個人信用情報に傷がつくのもあなたです。この支払いは完済するまで続きます。名義を貸して良いことは一つもありません。
名義貸し詐欺にあったらどうすれば良い?
名義貸し詐欺だったと気づいた時はどうすれば良いのでしょうか。
まずはクレジットカード会社やカードローンの会社に連絡して、カードの利用停止を行いましょう。その上で、弁護士や警察に相談するのが良いです。
もし本人確認書類を渡していて、他に何か契約される可能性があれば日本貸金業協会に連絡して、借入の自粛を要請しましょう。これ以上被害を拡大させてはいけません。
警察や弁護士に相談
警察に相談するのが良い方法ですが、できればその前に弁護士に相談しておきましょう。
警察は個人的な金銭トラブルを解決してくれるところではありません。名義貸しは犯罪で、自分も犯罪に関わっているのでいきなり警察に行くよりも弁護士に相談してからの方が良いですね。詐欺に加担してしまった訳ですから、取り調べなど受けることになります。
詐欺にあったから支払わないは通用しない
名義貸しの詐欺にあったので、自分が借りた訳ではないと言っても、支払い義務が消えることはありません。毎月支払いは契約した本人に請求されるだけです。
そもそも、カードローンやマイカーローンの会社やクレジットカード会社からすると、本当に名義貸しの被害にあっているのか分かりませんし、あくまで契約している本人へ請求をするだけです。気軽な気持ちで名前を貸してしまうと、とんでもない被害にあってしまいます。
債務整理になる可能性もある
多額の負債が支払えない場合は、任意整理や債務整理を行うことになります。
債務整理を行うといわゆるブラックリストに載った状態となり、5年〜10年はローンなどの契約が難しくなります。また、相手の所在がわかっている場合は求償権(きゅうしょうけん)を請求することができます。ただ、求償権を請求しても支払いが行われるという保証はありませんし、詐欺師の所在がわかるケースも少ないので、現実的には難しいと言えます。
まとめ
名義貸しは違法行為なので、あなた自身が罪に問われます。謝礼は数万円です。その数万円のためにずっと高額な支払いを続けることとなったり、将来ローンが組めなくなったりするので、名義貸しに関わってしまったら損しかありません。
まずはどんな手口があるのかを知ることで、甘い話があった時には「名義貸しかもしれない」と疑ってもらえれば、被害を受けなくても済むかもしれませんね。
・ 口座や携帯電話は振込詐欺や架空請求に使われる
・ 金銭的な被害が生じても請求は契約者にいく
・ 車は解体して海外に売られる
・ 名義貸しは犯罪行為。6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金
・ 名義貸しを行なったと知られると一括返済を求められることもある
・ 詐欺にあったとわかったら弁護士や警察に相談