相続税が払えない

日本では、亡くなった人から不動産や建物、現金などの財産を受け取る時には必ず相続税が発生します。

相続税がかかることはわかっていても、どのくらいかかるのか?払わなければいけないのか?また、払わないとどうなるのか?など相続税にまつわる疑問はたくさんあります。

いざ財産を相続した際に困ることがないよう、相続税にまつわる疑問についてご説明します。

相続税とは?

相続税についてご説明する前に、なぜ相続税が課せられるのか知っていますか?

そもそも相続と言うのは何もせずに利益を得ますよね。なので「不労所得」に当たると考えられています。一定の裕福層が不労所得によって多くの財産を相続するとなると、資産格差が広がってしまうので、これを防ぐために相続税という税金を課して、貧富の差が広がらないようにしているんです。

では、具体的に相続税とは何かについてご説明します。

相続税とは、亡くなった人(父母、子供、配偶者、状況によっては兄弟姉妹や姪甥、孫)の財産を引き継ぐ時に課せられる税金のことです。

税率は以下のように、相続する財産額に応じて変動し、10%~最大55%とかなり高額な税率になっています。

法定相続分に応ずる取得額 税率 控除額
1000万円以下 10% 0円
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

1円でも相続すれば相続税が課せられてしまうの?

実は違うんです。相続税には基礎控除額というものがあります。

基礎控除額は「3000万円+法定相続人の人数×600万円」で算出します。相続する財産が基礎控除額を上回った分について課税され、基礎控除額を上回らない場合は非課税となります。

さらに、もう1点。相続財産はプラスとマイナス両方の財産を合わせて正味の相続財産を計算し、その正味の相続財産に対して課税されます。プラスの財産とはお金や不動産などで、マイナスの財産は負債や借金などのことを指します。

具体的に説明すると・・・

土地建物の総額が5000万円、預貯金が5000万円、借金が500万円、葬儀費用が200万円で、相続人が3人いた場合、

正味の相続財産は・・・
プラス財産(5000万円+5000万円)―マイナス財産(500万円+200万円)=9300万円

相続税の課税対象額は・・・
正味の相続財産9300万円―基礎控除額(3000万円+3×600万円)=4500万円 となります。

簡単にご説明しましたが、相続税には基礎控除の他にも、「小規模宅地等の特例」といった減税措置や、配偶者の場合は「配偶者控除」といった税額控除もあります。実際の相続税の計算はとても複雑なので、実際に相続税がいくらになるかは専門家に相談するようにしましょう。

相続税を払わないとどうなる?

相続税は色々な控除があるとはいえ税率は高いので、できれば払いたくない、払わなくてもバレないのでは?と思っている方もいらっしゃるかもしれません。相続税をもし払わなかった場合どうなるのでしょうか?

相続税だけに関わらず、納税は法律で決められている国民の義務になります。

よって余程の事情がない限り免れることはできず、相続税を払わないことは脱税にあたり、れっきとした犯罪になるんです。相続税を払わないと、延滞税や重加算税などどんどんペナルティが課されていきます。

そもそも相続したことを申告しなければいいのでは?と思うかもしれませんが、人が亡くなった場合には、市区町村から税務署へ通知されます。亡くなった方が土地や建物などの資産を所有している場合は、亡くなったという情報と一緒に固定資産の情報も伝わります。このような情報から税務署は相続税がかかるかどうかある程度判断し、また相続人の資産の動きをある程度把握しています。

なので相続人から相続税の申告がなければ、税務署から催促がきます。

税務署からの督促を無視して払わないでいるとどうなるかと言うと・・・最悪の場合、逮捕になります。脱税の罰則は、「5年以下の懲役、または500万円以下の罰金、もしくはこの両方」となっています。

課税対象となる財産を相続したのであれば、相続税を払わないという選択はないのできちんと支払うようにしましょう。

払えない場合の対処方法

相続税を払わないと脱税になり、最悪逮捕されてしまいます。とは言え、払う意思があっても払えるだけのお金がないという場合もありますよね?

財産を相続したといっても、土地や建物などお金以外の財産だった場合は、すぐに現金化もできず、それに課せられる相続税を払えるだけのお金がないという場合もあります。

そのような場合どのようにしたらいいか、対処方法をご紹介します。

延納制度

延納制度とは、相続税を分割して納める方法です。

相続税の申告・納税期限は、相続開始から10か月以内となっているのですが、この期限内に一括での支払いが不可能な場合に分割して支払う方法で、原則5年から最大で20年まで延納が可能です。

ただしこの延納制度を利用するには以下の条件すべてを満たす必要があります。

・相続税額が10万円以上
・金銭で納付することが困難な事由があり、金銭での納付が困難な金額の範囲内
・延納税額および利子額に相当する担保を提供
・相続税の納付期限までに、延納申請書と担保提供関係書類を税務署長に提出

相続税額が10万円以下の場合には、この延納制度を利用することはできません。また、金銭で納付することが難しく、納付が困難である金額の範囲内しか延納することはできません。

仮に相続税が200万円で、相続した財産に150万円の金銭がある場合には、残りの50万円部分しか延納申請はできません。ただし、金銭での納付が困難な金額の範囲内というのは、相続した財産に限るものではありません。相続した財産+もともと保有している財産の合計金額でも納付が困難な場合を指しています。

また、延納制度とは基本的にはローンのようなものなので、担保を提供する必要があります(延納税額が100万円超で延納期限が3年を超える場合)。担保になる財産にも条件がありますが、相続した財産に限らず、相続人の固有の財産や共同相続人または第三者が所有している財産であっても担保になります。

延納期間中は、延納税額に対して利息が付きます

分割して納めることで無理なく相続税を支払うことができるようになりますが、延納税額に対して利息がつくのでその点は注意が必要です。この利息つまり利子税は、基本的には延滞税や重加算税よりも低い金利にはなっていますが、延納を利用すると払い終わるまでは利子税がかかります。一括で払うよりも多くの税金も納めることにはなりますので、注意が必要です。

相続した財産ごとに延長期間や利子税が異なり、以下のように10種類に分かれています。

区分 延納期間
(限度)
延納利子税の特例割合
(平成29年1月1日~)
不動産等の割合が75%以上 ①動産等に係る延納相続税額 10年 1.20%
②不動産等に係る延納相続税額(③を除く) 20年 0.80%
③計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木に係る延納相続税額 20年 0.20%
不動産等の割合が50%以上 ④動産等に係る延納相続税額 10年 1.20%
⑤不動産等に係る延納相続税額(⑥を除く) 15年 0.80%
⑥計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木に係る延納相続税額 20年 0.20%
不動産等の割合が50%未満 ⑦一般の延納相続税額(⑧⑨⑩を除く) 5年 1.30%
⑧立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(⑩を除く) 5年 1.10%
⑨特別緑地保全地区内の土地に係る延納相続税額 5年 0.90%
⑩計画伐採立木の割合が20%以上の計画伐採立木に係る延納相続税額 5年 0.20%

物納制度

相続税に限らず税金は、原則として金銭納付なのですが、相続税は例外的に延納によっても金銭納付が困難と判断される場合には、一定の相続財産による物納が認められています

物納できる財産は、以下の3種類で優先順位があります。

第一順位 不動産・船舶・国際証券・地方債証券・上場株式等
第二順位 非上場株式等
第三順位 動産

そのほかにも以下の条件を満たす必要があります。

・延納によっても金銭で納付することが困難.な事由があり、
その納付を困難とする金額を限度とする
・管理処分不適格財産以外の財産または、物納予定の財産が
物納劣後財産であって他に物納できる財産がない
・相続税の納付期限までに、延納申請書と担保提供関係書類を税務署長に提出

あくまでも延納期間を設けてもそれでも金銭での納付が難しい場合のみ利用することができる制度で、「お金があるけど物納したい」というのは認められません

また、上記のように物納財産には優先順位があり、「不動産はあるけど、非上場株式で物納したい」ということもできません

申請してから税務署が申請財産を調査して物納の可否を決定するのですが、調査に時間がかかる場合には最長で9か月待たされることもあります。書類の提出が間に合わずに提出期限を延ばした場合や、提出書類の不備があり再提出するまでの期間など、物納の場合であっても利息が発生する場合があるので注意が必要です。

遺産の売却

相続した財産を売却して相続税を納付するという方法もあります。

本来であれば、相続してプラスになるからこそ相続税が課せられるのであって、相続税が払えないというのはおかしな状況ではありますが、相続財産が金銭ではない場合は、相続税は金銭で納める必要があるので、相続財産を売却して金銭に変え納税するというのも一つの方法です。宝石や美術品などは処分しやすい動産ですし、遠方にあって利用しない不動産なども処分するという方法もありますよ。

相続放棄

相続税は財産を相続した場合に課せられる税金なので、そもそも財産を相続しなければ相続税が発生しないので、相続を放棄するという方法もあります。ただし、相続放棄はマイナスの財産だけではなく、プラスの財産も放棄するので注意が必要です。

そもそも相続には以下の3つの方法があります。

・単純承認・・・プラス財産もマイナス財産も無制限にすべて相続
・限定承認・・・プラス財産の範囲内でマイナス財産も相続
・相続放棄・・・一切の財産を相続しない

限定承認と相続放棄を選ぶには期限があり、「自己のための相続の開始を知った時から3ヶ月以内」となっています。また、相続の方法を選ぶ前に、財産の全部もしくは一部を処分してしまうと単純承認をしたものとみなされ、後で借金などが発覚しても相続放棄や限定承認をすることはできません。

相続税が払えない場合には、まず最初に「相続するかどうか」を考えることをおすすめします。

ちなみにですが、相続放棄は一旦認められると撤回することはできません。また相続放棄すると、法定相続人の相続範囲である兄弟姉妹までという制限はありますが、相続権が移動することになります。自分が相続放棄をすることによって別の身内に相続権が移動することになり、今後の親族関係に影響を及ぼすこともあるので、相続放棄する前に、相続権が移動する身内には事前に相談をしておいた方が良いでしょう。

相続放棄をどうすべきかわからない場合は、限定承認という方法もありますが、限定承認の手続は、調査に時間がかかり専門家へ依頼する場合には100万円以上の費用がかかるといわれているので注意が必要です。

いずれにしても3ヶ月という期限があるので、その間にどう相続するのが良いのかしっかりと検討しましょう。

まとめ

亡くなった人から財産を相続した場合に発生する相続税。何かしたらの財産を受け取ったから発生する税金ですが、財産はプラスの財産だけではなくマイナスの財産もあり、また相続税は他の税金に比べ税率が高いため、相続税を払えないなんて場合も出てきます。

しかしながら相続税を払うのは国民の義務であり、納税しないと脱税行為となり最悪の場合逮捕されることもあるのできちんと納税するようにしましょう。どうしても納税できない場合には延納制度や物納制度なども利用しましょう。

・相続税は亡くなった人から財産を相続した場合に課せられる税金
・相続税率は10~55%
・財産はプラスの財産、マイナスの財産がある
相続税は基本金銭納付
・相続税の支払い期限は、相続してから10か月
・相続税には基礎控除額がある
相続税は分割払いも可能
・相続税の分割払いには利子税がかかる
・相続税は物納も可能
・相続には「単純承認、限定承認、相続放棄」の3種類ある
限定承認、相続放棄は相続を知った時から3ヶ月以内に選択可能
・相続放棄は撤回できない
・相続放棄すると相続権が移動する