2019年4月1日に新元号が発表された直後の4月9日、麻生財務相より1万円、5千円、千円の3種類の紙幣のデザインが、5年後に新しくなると発表されました。新紙幣は2024年度の上半期を目途に発行され、2004年以来20年ぶりのデザイン変更となります。

新紙幣発行の発表のタイミングを改元に合わせたのかはさておき、新紙幣発行の発表を聞いて、新円切替が行われるのでは?と不安を感じた方も多いのではないでしょうか。

若い世代の方の多くは「新円切替」という言葉を初めて聞いたという方が多いかと思います。そこで、新円切替とは何なのか、現行紙幣はいつまで使えるのかなど、新デザイン紙幣発行にまつわる疑問についてご紹介します。

新円切替に加え、預金封鎖、財産没収が再びあるの?

新円切替とは、1946年2月16日、幣原内閣が発表した戦後のインフレ対策で、新紙幣(新円)の発行、従来の紙幣流通の停止など、通貨切替政策に対する総称のことです。

預貯金を強制的に金融機関に預入させ、「既存の預金を封鎖のうえ、生活費や事業費などに限って新銀行券による払出しを認める」という非常措置を実施しました。

“新円切替”が、具体的にどのような政策だったのか、流れとともにご紹介すると・・・

① 発表の翌2月17日以降、すべての金融機関の預貯金を封鎖。
② それまで流通していた10円札以上の銀行券
(=旧券10円・20円・100円・200円・1000円)は同年3月2日限りで無効。
(同年2月22日、「五円札」を追加)
③ 旧券は、3月7日までに強制的に預け入れさせ、これも封鎖。
④ 新円を発行。旧券との引換え、新円の預金引出しを認める
⑤ 11月「臨時財産調査令」により、税率25~90%の財産税を徴収。

発表翌日の2月17時点で預金していたものは全て没収され(預金封鎖)、3月からは旧紙幣は使用できなくなり(新円切替)、封鎖された預金は毎月一世帯あたり500円までしか新円で出金することができなくなり、さらに財産調査によって高額の財産税を徴収されることになったということです。

つまり、ほぼすべての国民が財産を没収されたのです。財産の格差是正といえば聞こえは良いですが、かなり強引な金融政策でした。

なぜ新円切替が行われるのでは?と言われるのか

今回の新紙幣発行の発表を受け、なぜ新円切替が行われるのでは?との不安が出てきたのでしょうか?それには以下のような理由が考えられます。

新紙幣の発行より5年も前に発表

新紙幣の発表が早すぎた、つまり準備期間を5年も設けたため、この準備期間が長いというのが、逆に新円切替を行う準備期間なのでは?と予想された理由の一つです。

昭和21年の新円切替の際には、新紙幣の発行が間に合わず、当初は旧紙幣に証紙を張って新円として流通させました。この際証紙そのものが闇市で出回ったりもしました。そこまでの緊急性はないにしても、新円準備に5年もかけるのか、なぜそんなに早い時期に新紙幣の発行を発表したのかは疑問が残ります

タンス預金のあぶり出し?

安部政権はキャッシュレスの推進を行っております。そんな中なぜわざわざ新紙幣を発行するのでしょうか?新紙幣発行のタイミングで新円切替を行い、タンス預金のあぶり出しを行うのではと言われています。

ゼロ金利やマイナス金利、銀行の経営破綻の不安などから銀行に預金せずにタンス預金をしている方が年々増えています。昨年末時点で個人(家計)が保有する現金は93兆円と言われており、過去最高を記録し、5年前に比べてなんと20兆円も増えています

タンス預金は相続税逃れなど脱税の温床にもなっているため、タンス預金をなくしていきたいという思惑が政府にあるのでは?と言われています。

新紙幣の発表によって「いずれ旧札が失効する時がくるのではないか」「旧札を貯めこんでいると疑われるのではないか」のような心理的な圧力をかけることはでき、タンス預金をあぶり出すという狙いがあるのではないかと言われています。

日本の債務が膨らんでいる

現在、日本政府の債務残高は1000兆円を超えており、借金は収入の2倍近いと言われています。そのため債務返済のための手段として新円切替が行われる可能性があるのではと言われています。

昭和21年の新円切替の際、日本は、第二次世界大戦の戦費調達などで財政が悪化し、国の債務残高が国内所得の260%を超える水準に達していました。それに加えて、戦後の物資不足などの影響もあり激しく物価が上昇、ハイパーインフレという状態でした。

この事態を収拾するために行われたのが新円切替という政策で、政府は家計が持っていた現金をすべて徴収し、インフレを鎮静化するとともに、財産税を導入し、国民が保有している財産に対して高い税率を課し、徴収した税金を使って国債を返済しました。

つまり、新円切替によって国民の資産と国債残高を相殺するという格好にしました。

債務超過である現状を打開するために安部政権が強権を発動させる可能性もゼロではないのではと言われています。

新紙幣発行にまつわる疑問

新紙幣発行にまつわるその他の疑問についてもご紹介します。

旧紙幣(現行紙幣)はいつまで使えるのか?

旧紙幣(現行紙幣)が新デザインの紙幣発行と同時に使えなくなるということはありません。新紙幣や硬貨が発行されたとしても、1度発行されたお金は特別な措置がない限りずっと使えるんです。

特別な措置とは、関東大震災後の1927年に行われた焼失兌換券の整理、1946年の新円切替、1953年の1円未満の小額通貨の整理などがありますが、このような特別な措置を除き一度発行された紙幣は原則として通用力を失うことはありません。

1986年に発行が停止された聖徳太子の1万円札も、伊藤博文の千円札も今でも使用可能ですし、もっと前の1955年に発行が停止された1円札や5円札も今でも使用できます。

「古い紙幣は使えなくなるから新紙幣へ交換します」などの詐欺が発生する可能性もあるので十分注意しましょう

2千円札はどうなる?

2千円札は、2000年7月19日に、世紀の切り替わりという時代の節目と、沖縄サミットを記念して発行されました。現在はほとんど流通していないため、もしかしたら1度も見たことがない方もいらっしゃるかもしれません。

2千円札については新デザインの発表がありませんでしたが、どうなるのでしょうか?2千円札は流通枚数が少ないために、新デザインの紙幣は発行せずに従来のままとのことです。現行紙幣がそのまま使えます。新紙幣が発行されないからといって現行紙幣が使えなくなるわけではないので安心してください。

ところで、なぜ2千円札は流通枚数が少ないのか?

アメリカやイギリスなどでは100ドル・ポンド紙幣より20ドル・ポンド紙幣の流通が多く、より一般的に利用されされていることから、1000円より大きく5000円より小さな単位の紙幣があれば利便性が高いはずと考えられました。

しかしながら、実際には、銀行やコンビニのレジに2千円札を入れるスペースを追加する投資を行うこともなく、2千円札は受け取るがおつりとして出すという仕組みは定着しませんでした。そのため、市場の2千円札は一度使われてもすぐに銀行に戻り滞留している=流通枚数が少ないとなっています。

新紙幣にはどこで両替できるのか?

最寄りの銀行や郵便局などで両替できます。但し、2024年以降です。

新紙幣の流通量が増えるとともに、現行紙幣(旧紙幣)は流通量が減っていくことになり、知らず知らずのうち手持ちの紙幣が新紙幣へと切り替わっていくでしょう。旧紙幣のままでも今まで通り使えるので、焦って新紙幣へ交換する必要はないので安心してください。

硬貨はどうなるのか?

500円硬貨のみ、2021年度上期をめどに新デザインの硬貨が発行されることが発表されています。新しい500円硬貨の特徴は、

・周囲と真ん中で色が違う「バイカラー・クラッド」構造(2色3層構造)
・フチのギザギザは一部を異なる形状にした「異形斜めギザ」
・フチの内側に「微細文字(JAPAN、500YEN)」
・「竹」「橘」「桐」というモチーフは変わらない

とのことで偽造防止を目的にデザインを変更したそうです。新しい元号である「令和」を刻印した硬貨が発行された後に新デザインの硬貨発行となるので、現行デザインの令和元年と刻印された硬貨は貴重なものになるかもしれません。

まとめ

新デザイン紙幣発行の発表が、前回の新デザイン紙幣発行の2年前よりも早い”5年前の発表”ということで、ほかの思惑があるのではとの憶測がささやかれています。

さまざまな憶測が飛び交っている新デザイン紙幣の発行ですが、1度発行されたお金は特別な措置がない限りずっと使え、新デザインの紙幣が発行されたからといって現行紙幣が使えなくなるわけではありません。

「旧紙幣は使えなくなる」などの詐欺が出てくる可能性があるので十分注意しましょう。

2024年に新デザインの紙幣が発行される
・デザインが変わるのは1万円、5千円、千円の3種類の紙幣
・2000円札はデザイン変更なし
・新デザイン紙幣発行のタイミングで新円切替が行われるのでは?との懸念も
新円切替とは、1946年に行われた政策
新円切替はタンス預金のあぶり出し施策の可能性もある
・タンス預金は5年前に比べ20兆円も増加
新紙幣や硬貨が発行されても、1度発行されたお金はずっと使える
・硬貨は、2021年に500円硬貨のみデザイン変更