介護費用

高齢化が進む現代において、誰もがいずれ必要になる介護の負担を家族だけではなく社会全体でサポートするために「介護保険制度」という仕組みが作られました。

40歳になると全国民が被保険者として介護保険に加入し、65歳以上の人は、市区町村から介護が必要だと認定(要介護認定)された場合、いつでも介護保険サービスを受けることができるようになっています。

40歳になって保険料が給与から天引きされたりするので、介護保険制度という制度があることは知っていている方も、介護保険制度の仕組みや受けられるサービスの内容などまで知っている方は少ないかと思います。

いつどんなタイミングで身近な人に介護が必要になるのかわからないので、そんな時に備えて、介護保険制度がどのようなものか、どんなサービスを受けることができるのかなど、わかりやすくご紹介します。

介護保険制度とは?介護施設と介護費用の相場について

まず初めに介護保険制度についてご紹介します。

冒頭でもご紹介しましたが、介護を必要とする高齢者を家族だけではなく社会全体として支える仕組みとして、現在の介護保険制度が平成12年4月からスタートしました。

保険料を支払う義務が発生しますが、国民が収めた保険料と、国や市区町村の税金を1:1の比率で合わせて介護の費用に充てる仕組みになっており、利用者が実際に支払う介護サービスの負担額を全体の1割程度に抑えて介護が必要な段階に応じで、様々なサービスが受けられるようになっています。

介護保険制度の対象者

介護保険制度の対象者は40歳以上のすべての国民です。40歳になった月から加入することになり保険料の支払い義務が生じ、その後は一生払い続けることになり、年齢によって以下の2つの区分に分かれています。

年齢 区分
65歳以上 第1号被保険者 介護認定を受けると、その程度により日常生活の支援や介護のサポートを受ける際に介護給付を受けることができる。
40~64歳まで 第2号被保険者 末期がんや関節リウマチ、脳血管疾患など全部で16種類の特定疾病に該当し、要介護認定を受けた人のみ、介護給付を受けることができる。

保険料は、区分によって、また市区町村や所得によって異なるので具体的な金額については各市区町村の公式サイトで確認してください。ここで注意してほしいのは、39歳以下の人はたとえ要介護状態になったとしても介護保険を利用することはできないという点です。

介護保険で受けられるサービス

介護保険で受けられるサービスは大きく分けて3つあります。どんなサービスなのか以下にご紹介します。

サービスの種類 内容
居宅サービス 自宅にいながら受けられるサービスのこと
・訪問介護―介護福祉士や訪問看護員が利用者の自宅を訪問して日常生活の介護を行う・通所介護―利用者がデイサービスセンターなどを訪れて介護サービスを受ける・訪問看護―入浴・排泄・食事など、被介護者の身体に直接触れる介護や、看護師や保健師が医療行為を行う・ショートステイ―短期間施設に入居して介護を受ける特定施設(ケアハウスなどの有料老人ホーム)への入居や、福祉用具のレンタルサービスも居宅サービスに含まれます。特定施設への入居は、施設サービスのように思われますが、老人ホームは入居者が自分の家として生活するための施設のため、居宅サービスに分類されます。
施設サービス 介護保険法で施設サービスと認められているのは以下の3つです。

・介護老人保健施設
病状が安定していて入院治療の必要がない利用者が、医師や理学療法士のもとで医療ケアやリハビリを受けながら在宅での介護を目指すための施設。在宅復帰が前提のため長期の利用は受け付けていません。

・特別養護老人ホーム
身体上または精神上の障害により常時介護が必要な状態の人を対象にした施設。

・介護療養型医療施設
介護保険制度がスタートした時に、介護の療養病床として許可された医療機関。ただし現在は新規の認定は行われず廃止される予定。

地域密着型サービス 市区町村によって指定された事業者が、その市区町村に住む利用者を対象として行うサービス。

小規模で運営される地域密着型のグループホームへの入居や、24時間対応可能な介護職員による定期巡回サービス、認知症の高齢者に特化したケア等、柔軟なサービスを受けられるという特徴がある。

これらの介護サービスを利用するためには、介護が必要な状態であることの認定(介護認定)を受ける必要があり、市区町村への申請が必要です。

<介護認定の流れ>
1. 市区町村に申請
2. 全国共通の認定調査書を使った訪問調査が行われ、コンピューターによる一次判定
3. 一次判定結果をもとに、保険・医療・福祉の専門家で構成される「介護認定審査会」が二次審査を行う
4. 判定結果を市区町村に通知。

認定を受けると、市区町村の指定を受けた事業者の介護支援専門家(ケアマネジャー)に介護サービス計画書(ケアプラン)を作成してもらい、そのケアプランに沿って最適なサービスを受けることになります。

要支援・要介護度認定の区分

介護認定には、大きく分けて「自立」「要支援」「要介護」の3つがあります。

自立 介助なしで日常生活を送ることが可能
要支援 要介護への進行を予防するための支援が必要で、介護サービスの利用によって改善が見込まれる
要介護 自立した日常生活を送ることが困難で、何らかの介護を必要とする状態

自立と認定された場合は、介護保険の給付を受けることはできず、要支援・要介護のいずれかに認定された場合、介護保険が適応されます。

認定度 状態 給付限度額
要支援1 日常生活はほぼ自分でできるが、要介護状態予防のために少し支援が必要。 月額50,030円
要支援2 日常生活に支援が必要だが、要介護に至らずに機能が改善する可能性が高い。 月額104,730円
要介護1 立ち上がりや歩行が不安定。日常の中で、排泄や入浴などに部分的な介助が必要。 月額166,920円
要介護2 自力での立ち上がりや歩行が困難。排泄や入浴などに一部たまは全介助が必要。 月額196,160円
要介護3 自力では立ち上がりや歩行ができない。日常においても排泄、入浴、衣服の着脱など全面的な介助が必要。 月額269,310円
要介護4 排泄、入浴、衣服の着脱など日常生活の全般において介助が必要。 月額308,060円
要介護5 日常生活の全般において全面的な介助が必要であり、意志の伝達も困難。 月額360, 650円

上記でご紹介した給付金限度額はあくまでも標準的な地域での目安で、お住いの市区町村によって異なるのでご注意ください。

介護施設と介護費用の相場

高齢者や要介護者を対象にした介護施設は、種類も多く費用も施設によって様々あるので、おおまかにご紹介します。

種類 入居一時金 月額利用料
公的施設 介護保険施設 特別養護老人ホーム なし 10~15万円
介護老人保健施設 なし 数万~15万円
介護療養型医療施設 なし 10~20万円
福祉施設 養護老人ホーム なし 0~10万円
民間運営 有料老人ホーム 介護付有料老人ホーム 0~数千万円 12~30万円
住居型有料老人ホーム 0~数千万円 10~30万円
健康型有料老人ホーム 0~数千万円 20~40万円
その他 サービス付き高齢者向け住宅 施設による 施設による
グループホーム あり 数万~30万円
ケアハウス 数十万程度 数万~20万円

公的施設は費用が低くオススメなのですが、高齢者が増え施設が足りず、希望者全員が入居できるわけではなく、待機者が多くなかなか入居できないというのが実状です。そのため民間施設を利用する方も多いのですが、民間施設は公的施設に比べてやはり費用は高くなってしまいます。

介護費用は医療費控除の対象になるか

上記でご紹介したとおり介護費用はそれなりのお金がかかりますが、介護のために支払った費用のうち、医療費控除の対象になるものがあるんです。どのようなものが医療費控除の対象になるのかご紹介します。

施設サービス

控除対象となるのは以下の施設です。

施設 医療費控除の対象
特別養護老人ホーム 施設に支払ったサービス料(介護費・食費・居住費)の2分の1
地域密着型介護老人福祉施設
介護老人保健施設 ・施設に支払ったサービス料(介護費・食費・居住費)
・診療や治療を受けるために必要な特別室(個室など)の使用料
介護療養型医療施設

控除を受けるためには、施設が発行する領収書の提出が必要となります。また、居宅サービスにおいても、自己負担額が控除対象となります。

その他、6ヵ月以上寝たきりの人の紙おむつ、貸おむつ代も自己負担額が控除対象です。
医療費控除を申請する際には、おむつ代の領収書と、医師が発行する「おむつ使用証明書」を添付する必要があるので、医師に相談しないでおむつを使用している人は、一度医師に相談してみると良いでしょう。

交通費

通所リハビリテーションや短期入所療養介護等を受けるために、介護老人保健施設や指定介護療養型医療施設に通うときに支払った交通費も対象になります。電車やバスなどの交通機関を利用した場合は領収書は不要ですが、やむをえずタクシーを利用した場合は領収書の提出が必要になります。自家用車を使用した場合のガソリン代や駐車場代の費用は対象外です。

以上のような費用が医療費控除の対象となるので、確定申告前に該当する費用がないか確認してみましょう。

介護費用の助成金、補助金について

介護費用の負担を軽くするための支援制度には、介護保険制度以外にもあるのでいくつかご紹介します。

家族介護慰労金制度 寝たきりや認知長の高齢者を介護している低所得の家族に対して慰労金を支給する制度。自治体によって支給対象者や支給額が異なる。
介護休業給付制度 家族を介護するために休業した人に給付金が支給される制度で、パート勤務の人にも適応されます。
バリアフリー改修補助 介護や支援が必要な人に介護保険から住宅改修(リフォーム)費用の一部を支給する制度。バリアフリー化の改修工事に限定され支給額には上限があり、改修にかかった費用の1割は自己負担する必要があります。自治体によって対象となる工事の内容が異なったり、独自の助成金制度を実施している場合もあります。

介護費用を抑える4つの節約方法とは

身近な人に介護が必要になった場合に介護費用がかかってしまうのか仕方ありませんが、できるだけ節約したいですよね。介護費用を節約する方法を4つご紹介します。

1.高額療養費制度

医療機関や薬局の窓口で支払う医療費ですが、保険に加入していれば自己負担額は1~3割になっていますが、医療費が高額になれば負担も重くなりますよね。

実は、1ヵ月の自己負担額には上限が設けられており、一定額を超えると還付を受けられるってご存知ですか?この制度を「高額療養費」制度といいます。加入している公的医療保険に、申請することで支給が受けられるんです。

大企業の従業員が加入する健康保険組合、公務員が加入する共済組合は自動的に還付が受けられるところが多いですが、中小企業の従業員が加入する協会けんぽ、自営業者などが加入する国民健康保険、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度は、申請が必要なので対象になりそうな場合は問合せをしてみましょう。

2.高額介護サービス費

介護保険は65歳以上の人が介護を必要としたときに介護サービスを受けられる国の制度で、利用者は実際に使った介護費用の1割を負担します。

1ヵ月あたりの自己負担額は所得に応じた限度額が設けられていて、高額になった場合は「高額介護サービス費」から超過分を払い戻してもらえるんです。対象者には市区町村からお知らせが届くので忘れずに申請しましょう。

3.高額医療・高額介護合算制度

同時期に医療費も介護費も両方かかったという方には、医療費と介護費の自己負担額を合算して払い戻してもらえる「高額医療・高額介護合算制度」があります。この制度の対象になるのは、8月1日~翌年の7月31日までの間に自己負担した健康保険と介護保険の合計です。

まずは健康保険の「高額医療費」と介護保険の「高額介護サービス費」で還付を受けたうえで、なお、合算制度の限度額を超える人は、その超過分を払い戻してもらえるんです。

合算制度の限度額は年齢や収入によって異なったり、該当するかどうかを自分で見極めるのはむずかしいので、まずは介護保険の窓口に相談してみましょう。合算できるのは、扶養家族など同一の健康保険に加入している人の医療費だけになります。

4.確定申告の医療費控除

1年間の医療費が10万円以上200万円以下または、総所得金額の5%の場合、確定申告をすると税金が戻ってきます。介護に関する費用もこの医療費控除の対象になるものがあるので該当するものがある方は確定申告をしましょう。医療費控除ができる確定申告の期限は遡って5年間になります。

まとめ

いざ身近な人に介護が必要になった場合に不安になるのは介護にかかる費用ですよね。40歳になったらだれもが加入する介護保険制度だけでなく、様々な助成金制度もあるので、介護が必要になる前にどんな制度があるのか把握しておくと安心です。

・介護保険制度は40歳以上の国民全員が対象
・40歳から保険料の支払い義務がある
・65歳以上は、介護認定を受けると介護給付可能
・40~64歳は、16種類の特定疾病に該当し、認定を受けると給付可能
・介護認定には、自立、要支援、要介護の3段階
・要支援は1~2、要介護は1~5の段階
認定度合によって給付金額やサービスが異なる
・公的介護施設は安価で利用できるが、待機者が多く入居が難しい場合も
・介護保険制度以外にも介護の助成金制度がある