入院費用を少しでも安く抑える方法

思わぬことで入院をすることになってしまうことってありますよね。自分だけは大丈夫と思っていても、突然病気や怪我で入院を余儀なくされることはあります。

そんな時、入院費用が高くて支払いができそうにないと、お金のことが心配で治療どころではなくなってしまいます。

もしも入院費用が高くて支払えない時、実は様々な制度が用意されているのでうまく利用すれば、入院費用を安くすることができるかもしれないのです。今回は入院費が高くて払えない場合にどうすれば良いのか、各種制度の紹介をしていきます。

入院費のお金がない時に便利な制度

実は入院費が安くなる制度がいくつか存在します。今回はぜひ利用してもらいたい制度を3つ詳しく紹介したいと思います。その3つの制度とはこちらです。

・ 高額療養費制度
・ 高額療養費貸付制度
・ 高額療養費委任払い制度

高額療養費制度を利用

高額療養費制度とは、1カ月に病院などの窓口で支払う金額が、上限を超えないようにする制度です。この上限は所得や年齢により決まります

自己負担の限度額はいくら?

高額療養費制度を利用した場合の自己負担額は、年齢や年収によって変わります。

ここでは標準的な年収で70歳未満の人の場合を例に説明します。

上位所得者(月額報酬53万円以上)と低所得者(市町村の非課税世帯)ではない標準的な年収の場合、

80,100円+(かかった医療費−267,000円)×1%

が自己負担の上限額となります。

高額療養費制度の注意点

1カ月とは1日〜末日までのことです。月をまたぐと、その月ごとの医療費が上限を超えなければ適用になりません。もしも事前に入院することがわかっていれば、月末からの入院ではなく月初からの入院にした方が月をまたがないので支払う金額を安くすることができます。

必ず事前手続きをしよう

高額療養費制度は、事後手続きと事前手続きの2通りあります。

事後手続きの場合は、いったん病院へ3割負担した分を全て支払います。例えば3割負担で30万円の場合は、退院時に30万円も支払わなければなりません。

そのあと、高額療養費制度の申請をすると約21万円が戻ってきますが、戻ってくるまでに3ヶ月ほどかかるので、貯金があって還付までに時間がかかっても大丈夫という人なら事後手続きでも良いかもしれません。申請は、加入している保険や国民保険の場合は市町村へ行います。

返金にはやや時間がかかりますので、事前に手続きをして窓口での支払いを少しでも減らしましょう。

事前手続きに必要なもの

事前に手続きするには「限度額適用認定証」が必要です。これを持っていれば退院時の窓口の負担額が約9万円ですみます。

まず、加入している保険(健康保険組合や共済組合、国民健康保険や協会けんぽ)で、限度額適用認定証を申請し、交付してもらいます。そうすると窓口での負担が限度額までですみます。

限度額適用認定証は使わなくても問題ありませんので、もしも支払う金額が自己負担額を超えなくても大丈夫です。

高額療養費貸付制度を利用

高額療養費貸付制度とは、無利子、無担保で高額療養費の約8〜9割を貸付してもらえる制度です。申込をしてから2〜3週間で口座に振り込みをしてもらえます。

全てを貸してもらえるわけではありませんが、無利息で入院費を借りることができるのは大きいですよね。入院費に困ってカードローンを行おうかと考える人も多いと思いますが、無利子で借入ができる高額療養費貸付制度を検討してみてはいかがでしょうか。

どんな手続きが必要?

まず手続きに必要な書類ですが、貸付制度の申請書・借用書・かかった医療費の点数がわかる請求書か領収証が必要です。

申請先は加入している保険になるので、詳しくは社会保険、共済組合などに確認することになります。加入している保険によっては高額療養費貸付制度を行なっていない場合もあり、国民健康保険でもこの制度がないところもあるので、国民健康保険の場合は市町村に確認してみましょう。

高額療養費貸付制度の注意点

貸付を行ってもらえることが決まっても、口座に振り込まれるまでに2〜3週間かかってしまうのが大きな注意点です。

また、高額療養費貸付制度は行なっていない保険や市町村があるので注意が必要です。また、借入したら必ず返さなければなりません。もしも予定していたよりも医療費がかからなかった場合や、減額された場合は、返納通知書が届くので差額を振込することになります。返済を滞ったり返済をしなかったりすると、当然ですが督促の連絡がきますので注意が必要です。

高額療養費委任払い制度を利用

社会保険にはこの制度はありませんが、国民健康保険では高額療養費委任払い制度というものがあります。これは、医療機関で支払う金額を自己負担の上限額までにして、残りは保険が医療機関に直接支払うという制度です。事前に高額療養費委任払い制度の申請書の交付を受けておきましょう。

高額療養費委任払い制度の注意点

いくつか注意点があり、最大の注意点は保険料の滞納がある場合はこの制度が利用できない可能性があることです。滞納がある人は、まずは保険の窓口へ相談しましょう。そしてすでに支払った医療費については対象外です。

また、医療機関によってはこの制度は受付ていないという場合もあるので、確認が必要です。70歳未満の人しか受付られていないので、こちらも注意が必要です。

委任払いに必要なものは?

高額療養費委任払いの申請に必要なものは、保険証・世帯主の印鑑です。

保険料に滞納があり、申請するのが本人ではない場合は、委任状及び顔写真の入った身分証明証(運転免許書・パスポートなど)が必要です。

病院の窓口で相談する

病院の窓口で支払いが難しいことを相談するのも1つの方法です。

病院が、安易に分割や支払いの延期を承諾してくれるとは考えにくいですが、できるだけ双方にとって良い方法を考えてくれる可能性は高いです。病院も費用を回収しなければなりませんので、相談に乗ってくれる可能性はあります。

健康保険は何割負担?

医療費の自己負担額は年齢によって変わります。

75歳以上は1割で、現役並みの収入がある人は3割負担です。70歳〜74歳は2割負担で、6歳〜70歳までは3割負担です。6歳未満は2割ですが、市町村の乳幼児医療制度により負担なしの場合がほとんどです。

これは国民健康保険でも社会保険でも負担額は同じです。何かと医療費はかかるので、きちんと保険料を納めていざという時に利用できるようにしておきたいですね。

健康保険や高額医療費制度の適用外になるのは?

医療費には健康保険や高額療養費制度の対象外になるものがあります。

・ 食事代
・ 入院時の雑費や日用品
・ 差額ベッド代
・ 高度先進医療
・ 保険適用外の治療費

主にこれらが保険適用外になります。

差額ベッド代は、4人部屋、2人部屋、1人部屋によって大きく料金が変わってきます。入院費を少しでも抑えたい場合は、4人部屋にして差額ベッド代が少なくてすむようにしましょう。

また、先進医療費や保険適用外の治療を希望した場合は自由診療になるので全額自己負担になります。加入している医療保険などがあれば、そちらから少しでもお金が出ないか確認しておきましょう。

入院費が払えないとどうなる?退院はできる?

様々な制度がありますが、お金がすぐに用意できない場合もあると思います。

そんな時は退院できないのではないか?と不安になると思いますが、基本的には退院は可能です。病院によっては入院費を支払って領収証を持って来きてから退院の手続きに入るというところもありますので、病院の窓口に相談をしてみましょう。

また、退院の医療費が未払いの場合、退院後の通院で診察してもらえないのではないか、という不安もありますがそのようなことはありません。もちろん窓口で聞かれることはあると思いますが、診察を拒否されるということは原則ありません。

保証人に請求がいく場合もある

退院時に料金が未払いの場合、病院から督促状が届きます。それでも支払いをしなかった場合、保証人に請求がいく場合があります。

保証人は、入院をする時の書類に保証人を書く欄があり、そこに記入した人が保証人です。保証人に請求が行く場合や、病院から内容証明が届く場合もあります。

内容証明が届いたら、弁護士や司法書士から回収が行われたり、訴訟になる可能性もありますのでなるべく早く支払いをしなければなりません。

医療費はいくらくらいかかるもの?

病気や怪我の種類により一概には言えませんが、全日本医療協会のデータによると例えば胃の悪性新生物の場合だと、約18日間の入院で医療費は約98万円、3割負担で約30万円かかることになります。

もちろん高額療養費制度を使えば自己負担額に上限がありますが、うまく制度を活用しなければ大変な金額がかかることになります。保険料を日頃から納めていないとすぐに制度が利用できなかったりして不都合が起きますので、必ず納めておくようにしましょう。

まとめ

お金がないから病院に行くのを我慢しなければ・・と思っている人もいるかもしれませんが、入院費の負担を少しでも軽減してくれる制度がたくさんあります。

いつ怪我や病気で入院をしてしまうかわかりません。そんな時慌てないためにも、まずはきちんと把握して準備をしておくことが大切です。今回ご紹介した制度も事前に準備をしておけることはたくさんあります。賢く利用して入院中もお金のことで悩まなくて良いようにしておきましょう。

・ 高額療養費制度は事前手続きの方が良く、限度額適用認定証が必要
高額療養費貸付制度は、無利子で高額療養費の約8〜9割を貸付
・ 保険料に未納がある場合は利用できない制度もある
・ 差額ベッド代や食事代は保険適用外
・ 医療費未納は保証人に請求が行く場合もある