病気やケガで病院に行って医療費がかかった際に、私たちが支払う医療費は全額ではありませんよね?それは私たちが公的医療保険に加入しているからなんです。公的医療保険に加入して毎月保険料を納めているので、万が一医療機関にかかって医療費が発生した場合の自己負担額は少額で良いんです。
しかしながら、中には、「病気やケガをすることはほぼなく、病院に行かないから保険料を払いたくない!」と思っている方もいるのではないでしょうか?
社会保険に入っている方は保険料が給料から天引きされているので保険料の支払いをしている感覚があまりないかもしれませんが、国民健康保険に入っている方だと毎月保険料を支払う必要があるので、このように思う方がいらっしゃるかもしれません。
そもそも国民健康保険はどんな制度なのでしょうか?入らないといけないのでしょうか?
社会保険と国民健康保険は何が違うのでしょうか?国民健康保険にまつわる疑問についてご説明します。
国民健康保険とは
国民健康保険は、日本の社会保障制度の1つで、国民健康保険の加入者が病気やケガ、出産、死亡した場合に、必要な医療費が保険料から支払われる制度のことです。
日本では、「国民皆保険」というのが健康保険制度の基本になっており、日本国内に住所がある方であれば年齢や国籍に関係なく(外国籍の方は在留期間が1年以上と決定された場合)、必ず何かしらの公的医療保険に加入しなければなりません。つまり公的医療保険への加入は国民の義務です。
会社からお給料をもらっている方が加入する保険制度は社会保険と言い、社会保険に未加入の方は国民健康保険に加入する義務があります。社会保険には2種類あり、会社員やその家族なら健康保険、公務員やその家族なら共済組合に加入します。
国民健康保険と社会保険の違いをご紹介します。
国民健康保険 | 社会保険 | |
加入条件 | 個人事業主、無職の方など、その他の保険制度に属さない人すべて | 会社に勤務している正社員、または正社員の3/4以上労働する人
※短期間労働者は除く |
運営者 | 市区町村役場の国民健康保険窓口 | 協会けんぽ、または各社会保険組合 |
保険料 | 世帯単位で算出 | 個人単位で算出 |
扶養 | 扶養という概念はなく、世帯内の加入者数によって保険料が変わる | 設定範囲内の親族を扶養することができる。何人いても保険料は変わらない
※年金は配偶者のみ可 |
会社に勤めている方は社会保険に加入しており、給与から天引きという形で保険料を納めています。
会社を退職した場合は勤務先の社会保険から外されてしまうので、自分で国民健康保険への加入手続きを行い、保険料を納める必要があります。また、パートやアルバイトなど、雇用先の社会保険に入っていない家族がいる場合は、世帯主が各世帯の加入者数に応じて保険料の支払いをする必要があります。
国民健康保険への加入手続きをしなければ保険料を払う必要はないのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、日本は日本国民である限り何かしらの公的医療保険に加入する義務があるため、たとえ手続きをしなかったとしても、会社を退職した翌日から国民健康保険に強制加入させられているので保険料を払わなくて良いということはありません。
国民健康保険料を滞納するとどうなる?
会社に勤めている方は社会保険に加入しており、保険料は給料から天引きされているので滞納するということはないと思いますが、国民健康保険の場合は、支払い手続きを自分で行うため、お金に余裕がない場合は保険料の支払いを後回しにしてしまうことがあるかもしれません。
もし、国民健康保険料を滞納した場合、どのようになるのか時系列でご紹介します。
滞納期間 | |
支払期限を過ぎると | 保険料の納付期限を過ぎると、翌日以降に管轄の役所から通知書や電話などで督促されます。
場合によっては役所の職員が自宅にくることもあります。 |
6ヶ月~1年 | 今までの国民健康保険証の代わりに「短期被保険者証」が交付されます。
この「短期被保険者証」の有効期限は1~6ヶ月と通常の保険証よりも短く、期限が切れるたびに役所で更新手続きをする必要があり、この更新手続きの際に、保険料の支払い状況の確認が行われます。 |
1年以上 | 「短期被保険者証」の代わりに「資格証明書」が交付されます。
「資格証明書」は保険証ではなく単に国民健康保険の加入者であることを証明するためのもので、医療機関にかかった際は、ひとまず窓口で医療費を全額負担しなければなりません。 後日、申請をすれば自己負担分以外(治療費のうち7割)の払い戻しを受けることができますが、この際滞納している保険料と相殺されるため、戻ってくるお金はないと思った方が良いでしょう。 |
1年6ヶ月以上 | 証明書の交付はなくなり、医療費は全額自己負担になります。
高額医療費や出産育児一時金などの保険給付金も差し止められ、もしこれらの給付金を利用していた場合は、滞納分に回されます。 また、市区町村で実施している健康診断を受けることもできなくなります。 |
滞納が続くと・・・ | 給料や預金・不動産など財産の差押えが行われます。
差押えの対象となる財産は、滞納額により変わってきます。 預金と給与の4分の1までを差押えられる場合が多いようです。 一般的な差押えは、裁判所へ申立て手続きを行う必要があるため、ある程度時間がかかりますが、国民健康保険の滞納は行政への借金のため、申立て手続き必要がなく、差押え予告通知書が届いた時点でいつでも差押えが出来るようになっています。 |
以上のように、国民健康保険料を滞納すると、医療機関にかかった場合、医療費を自己負担で払う必要があるだけではなく、最悪の場合は財産を差し押さえられることになります。
それだけではないんです。国民健康保険料の支払いを期限内に行わないと、納付期限の翌日から延滞金が発生します。延滞金の利率は自治体ごとに異なりますが、保険料を滞納した場合は、国民健康保険料+延滞金を支払う必要があります。当然、滞納期間が長引くほど、滞納額が増えていくことになります。
延滞金の計算方法
延滞金の計算は、「滞納料金×延滞金利率(年率)×延滞日数÷365日」という計算式になります。
東京都多摩市の場合だと、納付期限から1ヵ月までは年2.8%、1ヶ月を経過した日以上は年9.1%という延滞金利率のため、仮に1万円滞納した場合は、
納付期限から1ヵ月目までは・・・10000円×2.8%×30日÷365日=23円
納付期限から2か月目以降は・・・10000円×9.1 %×30日÷365日=75円
と2か月目以降から延滞金が高くなります。
国民健康保険料に時効はあるの?
国民健康保険料にも時効はあります。
保険料は2年、保険税は3年~5年というのが時効の期間です。
5年滞納し続ければ保険料を払わずに済むのでは?と思う方もいるかもしれませんが、時効が成立するための条件は「滞納を始めた日から時効成立日まで一度も請求がなかった場合」となっており、役所から請求や差押え命令が来るとその時点で時効はストップします。
役所は滞納分が少額であっても支払いを求めてくるため、時効が成立して支払う義務がなくなるという可能性はほぼないと言えます。
また、保険料を滞納したまま、県外へ引越ししたり、結婚して姓が変わったりたりしても、滞納分が消えることはありません。住所移転や婚姻届けなど、役所へ書類を提出することになるので、転出したり入籍をしたとしても役所は所在がわからなくなることはないので、支払いから逃げることはできません。
さらに、自己破産すれば払わなくは良くなるのでは?と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、確かに自己破産すれば抱えている借金の支払い義務がなくなるのですが、税金や国民健康保険料などの公金に関しては自己破産のよって支払いが免除されることはないんです。
払えない場合の5つの対処方法
国民健康保険料を納めるのは国民の義務で、支払いを免れることはできないとわかっていても、経済的にどうしても国民健康保険料の支払いができないという場合もありますよね?そんな場合の対処方法を5つご紹介します。
1.減額制度
国民健康保険では、経済的・身体的理由により保険料の納付が難しい方のために、保険料の減額措置を用意しています。
所得が一定金額以下になった場合
市区町村によって減額方法や減額の割合は異なるのですが、一般的に前年の世帯の総所得金額が一定額以下になった場合、保険料が7割、5割、2割という段階で減額されます。確定申告をしていれば自動的に適応されるので、申請の必要はありません。
倒産などにより解雇された場合
倒産などの会社都合によって解雇された場合は、保険料が7割減額されます。失業保険の手続きをした際に発行される雇用保険受給資格者証を持って役所へ手続きに行きましょう。
2.減免制度
市区町村によって減免基準は異なるのですが、基準に該当すると保険料が一部もしくは全額免除になります。減額制度は申請の必要はありませんが、こちらの減免制度は申請が必要です。
減免される主な基準は以下の通りです。
・災害や病気などにより生活が著しく困難になった場合
・生活保護を受けることになった場合
・就学援助など公私の扶助を受けている場合
免除を受けるには審査があり、誰でも免除されるわけではありませんが、納付が困難な場合は役所へ相談に行くことをオススメします。
3.無料低額診療制度
無料低額診療制度とは、低所得者などに医療機関が無料もしくは低額な料金によって診療を行う制度です。対象となるのは、低所得者、要保護者、ホームレス、DV被害者、人身取引被害者などの生計困難者とされており、全額免除と一部免除2種類があります。
すべての病院が対応しているわけではありませんが、生活に困っていて病院に行くことができない方は、利用できる病院や診療所を探してみましょう。制度の適応有無にかかわらず、まずは制度を実施している病院へ行って申し出をし、必要な治療をはじめましょう。
制度の適応については担当者が事情を聞いてその後判断されます。もし制度の適応にならない場合でも、治療費の支払いや当面の生活などについて相談に乗ってくれ、他の公的制度の利用が可能な場合はその手続きをすすめたりもしてくれますよ。
4.分割払いを相談する
明確な制度があるわけではありませんが、相談をして支払う意思を示せば、多くの自治体で未納分の分割納付が出来るようです。回数や金額は、納付者の事情や、自治体・担当者によって異なります。
「最低でも毎月〇円支払います」のように、少額でもいいので無理なく返済できる金額を提示してみましょう。収入や支出が分かるものや、資産状況がわかる預金通帳などを持って相談に行くことをオススメします。
5.扶養家族に入る
保険料の減免の対象にはならないがどうしても自分で保険料を払うのが難しい場合は、社会保険に入っている家族の扶養に入るという方法もあります。同一世帯(生計を共にしていること)であれば、3親等以内(親・兄弟・祖父母・叔母・甥・姪)までであれば扶養に入ることが可能です。同一世帯であることが条件ですが、同居の有無は問われないので、一人暮らしをしていても大丈夫です。
また、扶養に入るためには、自分の年収が130万円未満で、かつ、家族の年収の2分の1未満であることが条件です。扶養に入ることが出来れば、国民健康保険に入る必要がないので、国民健康保険料の支払い義務もなくなります。
まとめ
日本では、日本国内に住んでいる方は年齢や国籍に関係なく必ず何かしらの公的医療保険に加入する義務があります。会社員であれば社会保険に加入し、社会保険に加入していない方は国民健康保険に加入する義務があります。
なので滞納した場合には督促され最悪の場合は財産を差し押さえられることもあります。ただ、国民健康保険は、経済的に厳しく保険料を払えない方には減額や減免の制度も用意されているので、保険料の支払いが難しい場合には、滞納する前に役所へ相談に行きましょう。
・国民健康保険料は世帯ごとに算出
・国民健康保険料には時効があるが、時効が成立する可能性はほぼない
・国民健康保険料を滞納すると遅延金が発生する
・国民健康保険料を滞納すると医療費を全額負担
・国民健康保険料を滞納すると最悪の場合財産差押え
・国民健康保険料は自己破産しても支払は免除されない
・国民健康保険には、減額・減免制度がある
・医療機関を無料もしくは低額で受診できる無料低額診療制度あり