赤ちゃんを望むご夫婦が、避妊せずに夫婦生活を営み半年~1年間妊娠しない場合は不妊と言えるそうです。約10組に1組が不妊と言われるほど、不妊カップルが多いのですが、不妊治療を受けることを考えてまず気になるのは費用ですよね。

不妊治療には高額の費用がかかると言われていますが、実際にどのくらいの費用がかかるのでしょうか?助成金などの制度はあるのでしょうか?またどんな制度なのでしょうか?

これらの不妊治療にまつわる疑問についてご紹介します。

不妊治療にかかる費用の相場

不妊治療と一言でいっても、治療方法は1つだけではありません。方法によって費用が安価なものから高額なものまであり、これらの治療にかかる総額が不妊治療の費用となります。

治療の内容や長さによってかかる金額は変わってきますし、また保険適用外の治療方法は病院側が自由に金額を決めることができるので、通っている病院によっても差が出てくるんです。

以下に主な治療方法の費用の相場をご紹介します。

治療方法 内容 保険適用
有無
費用
(1回あたり)
妊娠率
タイミング法 医師がホルモン検査などから排卵日を推測し、指定した日に性行為を行う方法 適用 数千円 5~6%
人工授精 精子を子宮内に直接注入し、卵子と精子が出会う確率を高める方法 適用外 15,000円程 7~9%
体外受精 体内から取り出した卵子と精子の授精を体外で行う方法 適用外 20~50万円 30~40%
顕微授精 顕微鏡で見ながら細い針を使って卵子の中に直接精子を注入する方法 適用外 40~60万円 30~40%

一般的には、タイミング法→人工授精→体外受精(or顕微授精)の3つのステップが基本になっており、患者さんの症状や状態によってステップアップしていきます。治療方法がステップアップするほど、妊娠率は上がるのですが、費用や身体への負担も大きくなると言えます。

タイミング法や人工授精まででしたらそれほど高額ではありませんが、体外受精や顕微授精になると費用が高額になります。もちろんその分妊娠率は高いのですが、1回で必ず妊娠するというものではなく、何度か受けられる方が多いようで、4~5回の治療で8割くらいの方が妊娠されるようです。

1回あたりの治療費以外にも、タイミング法や人工授精の場合は月に2~3回体外受精や顕微授精の場合は月に4~5回通院が必要になります。妊娠の確率は人によって異なるので一概には言えないのですが、赤ちゃんを授かるまでに100万円以上、中には1000万円かかったという方もいらっしゃいます。

医療費控除の対象になるか

上記でご紹介したように、不妊治療にはやはりそれなりのお金がかかるので、妊娠を望んでいても費用を考えると躊躇される方もいらっしゃるかもしれません。そんな方に朗報です。不妊治療も医療費控除の対象になるんです。確定申告で医療費控除を申請すれば、所得税が還付され、翌年の住民税も安くなるんですよ。

特定不妊治療費助成制度

不妊治療の経済的負担を軽減する方法として、医療費控除をご紹介しましたが、医療費控除の他にも不妊治療を支援する厚生労働省による助成制度があるんです。ただしこの助成制度を受けるにはいくつか条件があるのでそれをご紹介します。

対象となる治療

体外受精および顕微授精

不妊治療の中でも高額な体外受精と顕微授精が助成の対象となります。

対象者

1. 特定不妊治療以外の治療法によって妊娠の見込みがない、または極めて低いと診断された法律上の婚姻をしている夫婦
2. 治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満

注意ポイントは、助成を受けられるのは、戸籍上の夫婦に限られるという点です。事実婚のカップルは助成の対象外になんです。

所得制限

夫婦合算の所得が730万円以下

夫婦二人の所得を合わせて730万円以上だと助成を受けることができません。自治体によっては所得制限を設けていない自治体もあるので、お住いの自治体の条件を確認しましょう。

指定医療機関

事業実施主体(都道府県、指定都市、中核市)において医療機関を指定。

助成を受けるためには自治体に指定された医療機関で治療を受ける必要があります。
指定医療機関は厚生労働省のWEBサイトで確認できますよ。

給付内容

1. 特定不妊治療に要した費用に対して1回の治療につき15万円(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等については7.5万円)まで助成する。通算助成回数は、初めて助成を受けた際の治療期間の初日における妻の年齢が40歳未満である時は6回、40歳以上であるときは通算3回まで。ただし、平成25年度以前から特定不妊治療の助成をうけており、平成27年度までに通算5年間助成を受けている場合は助成しない。

2. 1のうち初回の治療に限り30万円まで助成。(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等は除く)

3. 特定不妊治療のうち精子を精巣または精巣上体から採取するための手術を行った場合は、1および2の他、1回の治療につき15万円まで助成。(凍結胚移植(採卵を伴わないもの)等は除く)

少しわかりやすく説明すると・・・
助成の限度額は1回の体外受精・顕微授精につき15万円です。ただし、以前に凍結した胚(受精卵)を移植する場合や、採卵したが状態が良くなったなどの理由で治療を途中で終了した場合は半額の7.5万円になります。平成28年から初回の助成金額が増額され、初回に限り30万円。2回目以降は従来どおり15万円が上限。助成を受ける回数や期間は上限があって、平成26年度から28年度にかけて制度が段階的に変更になります。

<平成26年4月1日以降に初めて助成制度を利用する場合>

治療開始時の妻の年齢 年間助成回数 通算助成回数 通算助成期間
40歳未満 限度なし 6回まで 限度なし
40歳以上 年間2回 (初年度3回) 10回まで 5年間(平成27年度まで)

平成28年4月1日以降に初めて助成制度を利用する場合

治療開始時の妻の年齢 年間助成回数 通算助成回数 通算助成期間
40歳未満 限度なし 6回まで 限度なし
40歳以上43歳未満 限度なし 3回まで 限度なし
43歳以上 対象外 対象外 対象外

助成金を申請するには、自治体の窓口で手続きをする必要があります。申請期限は各自治体によって異なるので、お住いの自治体の期限を必ず確認しましょう。

赤ちゃんを授かるチャンスについて

最近は晩婚化などの影響で高齢出産される方も増えてきましたが、そもそも女性が妊娠できる年齢はいくつまでなのでしょうか?

生物学的にみると健康な女性が妊娠できる年齢は、最初に排卵がおこる12歳前後から閉経を迎える50歳前後までですが、一般的には閉経の約10年前、つまり40代頃から妊娠の可能性は極めて低くなり、45歳くらいが限界だと言われています。

いくら健康で外見が若く、たとえ妊娠しやすい体質だとしても、年齢を重ねれば卵子が老化してしまうので、必然的に妊娠率は落ちてしまいます。

現在は一般的に35歳以上の初めての妊娠を高齢妊娠、35歳以上の初めての出産を高齢出産と言い、高齢になればなるほど、妊娠できたとしても母体と胎児の両方にリスクを伴います。代表的なリスクをご紹介します。

妊娠中に病気にかかりやすい

高齢妊娠の場合、妊娠中の母体に大きな負担がかかり、病気になりやすくなります。特に、高血圧による頭痛や蛋白尿、むくみなどの症状がある「妊娠高血圧症候群」は40歳以上になると発症リスクが高くなり、「妊娠糖尿病」は35歳以上になると発症するリスクが高くなると言われています。

このほかにも、全身が疲れる甲状腺疾患や、流産の原因にもなる子宮筋腫や、卵巣に腫瘍ができる卵巣腫瘍などが発症する確率も高くなります。

流産、早産・染色体異常の確率が高まる

早産は、妊娠高血圧症候群や常位胎盤早期剝離、前置胎盤などによって引き起こされ、高齢になるとこれらの発症リスクが高くなるので、結果的に早産につながりやすくなります。

また、妊娠初期の流産の主な原因は、胚または受精卵の染色体異常だと言われています。
男女共に高齢になるほど精子・卵子が老化し、染色体異常を起こす確率が高くなるので、高齢出産は流産の確率が高くなります。染色体異常の1つに「ダウン症候群」があり、女性の出産年齢で比較すると、40歳の女性は25歳の女性に比べて約10倍ダウン症の発症率が高くなります。

赤ちゃんの死亡率も上昇する

出産年齢が上がるほど、妊娠22週以降の胎児や生後1ヵ月以内の新生児の死亡率である周産期死亡率が高くなります。

以上のように、年齢があがればあがるほど、妊娠の確率が低くなるだけでなく、妊娠した場合の母体や胎児のリスクが高くなるので、赤ちゃんを望んでいるご夫婦はなるべく早く妊活を始めることをオススメします。

費用の捻出方法

赤ちゃんを望んでいるご夫婦が、避妊をせずに夫婦生活を営んでも半年~1年間自然妊娠しない場合は不妊と言えるのでなるべく早く医療機関を受診することをオススメしますが、上記でもご紹介した通り不妊治療にはそれなりの費用がかかるので躊躇される方もいらっしゃるかと思います。そんな方のために、費用を捻出方法をいくつかご紹介します。

◆特集記事はこちら

まとめ

赤ちゃんを望んでいるご夫婦にとってなかなか授からないのは精神的にも経済的にも負担が大きいかと思います。高齢になればなるほど妊娠する確率は低く、母体や胎児へのリスクは高くなってしまうので、なるべく早く妊活を始めるのが一番ではありますが、体外受精や顕微授精といった不妊治療には条件付きではありますが助成金もあります。

また、自治体によっては助成対象になる治療内容の範囲拡大、助成金の上乗せ、回数延長などを行っているので、お住いの自治体の制度を確認してみましょう。助成金だけではなく医療費控除等でも負担を減らすことができるので利用してみて下さい。

・不妊治療の費用は100万円以上、人によっては1000万円かかる場合も
・不妊治療は方法によって保険適用になるものと保険適用外のものがある
・治療法がステップアップすると、妊娠率が上がるが体への負担や費用もあがる
厚生労働省の助成金制度「特定不妊治療費助成制度」がある
・特定不妊治療費助成制度を受ける回数や期間は上限がある
・独自の助成制度がある自治体もある
・不妊治療の費用は医療費控除の対象になる
・一般的に女性が妊娠できるのは45歳位が上限